狩猟民族としてのブロガー
最近、huluで観て面白かった番組に「サバイバルゲーム」がある。
イギリス軍特殊部隊の元隊員が熱帯雨林、砂漠、雪山などにパラシュートで降下しサバイバルテクニックを披露しながら生還を目指す。
イギリス軍特殊部隊の元隊員ベア・グリルスは、エベレストに登り、北極圏を冒険したタフな男。 だがこの番組で彼が教えるのは、普通の旅行者が最も過酷な環境下に置かれたときのサバイバルテクニック。熱帯雨林に落下傘で降下し、砂漠や湖など荒涼とし た地で生き残るための知恵だ。あなたなら無事に生還できるだろうか。
(引用:hulu)
この番組を見終わればコンビニへ行く途中で不意にジャングルに迷い込むようなことがあっても無事に家に戻れるようになるのでオススメ。
でも、基本的に全編通して食料は虫とか爬虫類になっているので、そういうのが苦手な人はご注意を。
視点を変えると物の価値が変わる
「サバイバルゲーム」を観て興味深かったのは、現代の文明社会では役立てられていないものが貴重なリソースに変わる瞬間があることだった。
特に食料。虫や爬虫類を見つけるとすぐに捕まえてその場で食べていた。動物の肉よりもタンパク質が豊富でサバイバルには理想的な食料だという。動物も自分で解体して毛皮など利用できるものは確保していた。
湿地ではシャツを膝に巻きつけて草原を歩いていた。シャツに水分を吸わせてそれをしぼりだして飲料水にするためだ。
他にもジャングルでは大木の上に木の枝とツルを使って寝る場所を作っていた。地面で寝ていると違って猛獣に襲われずにすむ。
無人島では漂流物のペットボトルを使って水中を覗くためのゴーグルを作っていた。
先入観を捨てて頭を働かせると、思いもよらないものが思いもよらない価値をもつ。
都市に生きる狩猟民族
現代人である僕は生まれた時から文明社会にプロテクトされて生きてきた。
水道の蛇口をひねれば水が出るし、部屋のスイッチを押せば電気がつく。
それは太陽が昇り沈んでいくのと同じように揺るぎのない普遍的なこととして受け入れてきたように思う。
でも、もし、この現代社会で狩猟生活的なサバイバルをするとしたら?
ここで思い浮かんだのが坂口恭平さんの著書「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」だった。
いわゆる路上生活者の家(0円ハウス)をじっくり観察し、
「これぞ理想の住まいではないか?」という視点を提出して
議論を巻き起こした建築家・坂口恭平。
本書はこれまで彼が追求してきた
「人が住むためにはどれだけの空間が必要なのか」
という疑問をおさらいしつつ、
さらに根源的な問い――
「人の暮らしに本当に必要なものとは何か」
「私たちの未来の生活はどうあるべきか」
を探る、現代人必読の一冊です。
(引用:坂口恭平『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』特設サイト)
路上生活をする人々の視点を持つとガラクタとしか思ってなかったものが突如として価値を持つようになる。
海の幸や山の幸があるように都市の幸が見えてくる。
これはまさに「サバイバルゲーム」で自然の中で得られるものを恵みとして発見/活用していたのと同じことだ。
路上生活者は都市という名のジャングルで生きる狩猟民族だったのだ。
狩猟民族としてのブロガー
そして、この狩猟生活的な価値観はネット空間へと広がってきているように感じる。
日常に対する解像度を上げ、それまでになかったものや見過ごされてきた豊かさを新たな価値として共有する。
アルファブロガーと呼ばれる人たちが持つこの特性はとても狩猟生活的だ。
それは革命家のように社会を壊して根底から覆そうとしているのとも違う。
「サバイバルゲーム」の中で繰り返し出てくる言葉に「自然に逆らうな。一体となれ」というのがある。
自然の力に抵抗してみたところで思い通りにコントロールすることはできず命すら落としかねない。
サバイブするには自然をあくまでリソースとして捉え、うまく利用していくことが必要だ。
アルファブロガーも同様にこの社会をリソースとして捉えているように思える。
今の社会に生きづらさを感じたとしてもそこから目を背けない。
むしろ、社会を入念に観察することによって道を切り開いているのではないだろうか。
これを可能にするのは既成概念にとらわれない柔軟性だ。
誰にでもできることではないし、誰もがそうする必要もないと思うけれど、自分らしい方法で摘み取った果実をシェアして生きるのは喜びの一つの形だろう。
この新たな潮流がこれから先どうなっていくのかは僕にはわからない。
多様性の一つとして社会へ残っていくのかどうか。
美味しそうに見えた果実が期待外れだったとき、人々は簡単に離れていく。
アルファブロガーを見ているとここからが本当のサバイバルの始まりなのかもしれないと感じる。
僕自身は流行りの専業ブロガーにはなれそうもないけれど、それでも摘み取った果実を分け合う喜びをささやかでも感じることができればと思う。
小沢健二「痛快ウキウキ通り」 を聴きながらそんなことを考える。
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