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【書評】「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 」

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内容(「BOOK」データベースより)
「ギブ&テイク」とは、この世の中を形成する当たりまえの原理原則に思える。しかしこれからの時代、その“常識”が果たして通用するのかどうか―著者の問題提起が、アメリカで大論議を巻き起こしている。人間の3つのタイプである、ギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)。このそれぞれの特徴と可能性を分析したするどい視点。世界No.1ビジネス・スクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」史上最年少終身教授、待望のデビュー作!!

「欲すればまず与えよ」とはよく言われることだ。この本でも大体においてそういったことが書かれている。こういうと道徳の話のように聞こえるかもしれないが、そうではない。行動科学に裏打ちされた極めて実際的な内容の本だ。

ギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)のそれぞれの特徴を実際のエピソードを元に分析し、ギバーの驚くべき優位性を明らかにしている。

しかし、ギバーにも「成功するギバー」と「燃え尽きるギバー」の2つのタイプがある。

成功するギバーと燃え尽きるギバー

すべてのギバーが成功者として的確であるわけではない。強い自己犠牲精神によって消耗してしまったりテイカーに利用されてしまう人もいる。「いい人」でいるだけでは燃え尽きてしまう。そうならないようにするためには自己犠牲ではなく他者指向性を持つことが大切だ。他者指向性とは自分を含めたネットワーク全体の利益の最大化を求めるという考え方だ。

f:id:cubicrain:20160203150241p:plain 引用:「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 」PART6 「与える人」が気をつけなければならないこと

成功するギバーになるには

実はギバーとしての素質はもともとすべての人に備わっている。例えば困っている人を見かければ助けてあげたいと思うのは自然な感情の動きだ。また自分にとってはなんでもないようなことが他の人にとっては大きな助けとなることがある。特別なことをしようと思わなくても自分が持っている力をネットワークで役立てることで大きな影響力を発揮するようになる。

「GIVE & TAKE」を読んで

この本を読み始めた時、ギバーになるのは難しそうだなと思った。自己犠牲的な精神とは違った意味で他者に貢献するということが具体的にイメージできなかったからだ。だけど、読み進めるうちにこの本が伝えようとしていることがわかってくるようになり、ギバーがどのような存在であるかも感覚的に捉えることができるようになった。

ギブ&テイクという言葉は与えることと受け取ることがはっきり分かれているように感じさせる。だけど、大切なのは「与える」とか「受け取る」といった行為そのものにとらわれるのではなく「みんな仲良くやっていく」ことに意識を向けることだ。

内田樹・著「寝ながら学べる構造主義」のレヴィ=ストロースの章でも触れられていたように、あらゆる社会は贈与することとそれに報いるための返礼のループによって耐えず変化し維持されている。

人間が他者と共生してゆくためには、時代と場所を問わず、あらゆる集団に妥当するルールがあります。それは「人間社会は同じ状態にあり続けることができない」と「私たちが欲するものは、まず他者に与えなければならない」という二つのルールです。
 これはよく考えると不思議なルールです。私たちは人間の本性は同一の状態にとどまることだと思っていますし、ものを手に入れるいちばん合理的な方法は自分で独占して、誰にも与えないことだと思っています。しかし、人間社会はそういう静止的、利己的な生き方を許容しません。仲間たちと共同的に生きてゆきたいと望むなら、このルールを守らなければなりません。それがこれまで存在してきたすべての社会集団に共通する暗黙のルールなのです。このルールを守らなかった集団はおそらく「歴史」が書かれるよりはるか以前に滅亡してしまったのでしょう。
引用:内田樹・著「寝ながら学べる構造主義」第5章

このように「与えること」はもともと本能のレベルでも生きるために不可欠なことであった。それなくしては僕らの社会、そして自分自身もまた存在することができなかったのだから。

ギバーになろうと意気込んでしまうと疲れてうまくいきそうにないけれど、周囲の人たちと仲良く楽しくやっていこうと思えば肩の力も抜くことができる。そんな視点を心に持っておくことはこれからも価値のあることであり続けるだろう。それに、ことさらにギブ&テイクなんて言わなくても僕ら日本人には「持ちつ持たれつ」って言葉もあるしね。

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