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人間関係のパターンを変えればうまくいく「自分の小さな「箱」から脱出する方法」

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自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 156人 クリック: 3,495回
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  本書で語られるのは「箱」についての話だ。
 この箱は一般には自己欺瞞と呼ばれている。


 不安、恐怖、悲しみ、怒りなどの感情に流されているとき、人はありのままの現実を受け入れることができなくなってしまう。だけど、自分自身でそのことに気づくことは難しい。そればかりか自分を正当化するために周囲の人や環境を利用し始める。

 人はちょっとしたきっかけで、この自己欺瞞の箱に入ってしまう。
 僕にも充分すぎるほどに身に覚えがある。耳の痛い話。

 だけど、その箱から外へ出られる方法があるとしたら?

  本書は大企業の上司バドと主人公との研修ミーティングという形式で、箱のメカニズム、そして、箱から出る方法が解き明かされていく。
 ある日、バドに呼び出された主人公はこう告げられる。

 

 「君には問題がある」
 バドは続けた。
 「そのことは職場の人間も知っているし、奥さんも知っているし、義理のお母さんも知っている。そしてご近所の人たちも知っている」

 

 自分にどんな問題点があるのか理解できるよう、君に力を貸すことができると思う。
 それに、どうすればその問題を解決できるのかを、学ぶ手助けもね。だからこそ、ここに来てもらったんだ。
 わたし'自身も同じ問題を抱えている。だからこそ、君に力を貸すことができるんだ。



 こうして箱=自己欺瞞をめぐる驚くべきミーティングが始まる。


 箱の中にいるか外にいるかが問題なんだ。
 君はまだ箱について多くを知っているとはいえないが、とにかく、箱の中にいると、現実を見る目がゆがんでしまう。自分自身のことも他の人々のことも、はっきりと見ることができなくなる。自己欺臓に陥るわけだ。そしてそこから、人間関係のあらゆるごたごたが起こってくる。

 


 ミーティングが進むにつれて、箱=自己欺瞞についてのメカニズムが少しずつ明らかになってくる。
 自己欺瞞は自分の感情を裏切ることから始まる。
 人は相手の気持ちやニーズを察知する力をもっている。それにもかかわらず、つい自分を優先して行動してしまうことがある。
 例えば、仕事で同僚を助けるべきだとわかっていながら、それを怠ったとき。同僚の欠点をあげつらうなど、もっともらしい理由をつけて自分を正当化し始めたりする。同僚に欠点があったとしても、これは正しいことだろうか?
 一度この状態に陥ると自分の正当性を強化するために、偏った考え方で周囲に接するようになる。自分に賛成してくれる人は味方であり、反対する人は敵とみなすようになったりする。もはや、ここには、なにが正しいのか?という視点はなくなってしまっている。
 これは典型的な箱に入った状態であり、箱に入っている限り、この負のスパイラルはずっとつづく。
 こうしたことは日常のあらゆる場面で起こりえる。
 本書ではこういった自己欺瞞のプロセスを「自分への裏切り」と呼び、次のように7つのポイントにまとめている。

 

 

自分への裏切り
1 自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動を、自分への裏切りと呼ぷ。
2 いったん自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる。
3 周りの世界を自分を正当化する視点から見るようになると、現実を見る目がゆがめられる。
4 したがって、人は自分の感情に背いたときに、箱に入る。
5 ときが経つにつれ、いくつかの箱を自分の性格と見なすようになり、それを持ち歩くようになる。
6 自分が箱の中にいることによって、他の人たちをも箱の中に入れてしまう。
7 箱の中にいると、互いに相手を手ひどく扱い、互いに自分を正当化する。共謀して、互いに箱の中にいる口実を与えあう。

 


 箱のメカニズムが理解できたとして、気になるのは、どうすれば箱から出ることができるのか?ということだろう。

 

「自分のことを考え続けている限り、箱の外には出られない。箱の中に入っているときは、たとえ自分の行動を変えようとしたところで、結局、考えているのは自分のことでしかない。だから、行動を変えても駄目なんだ」

 

  「『箱の外に出るために何をすべきか』という一質問には、大本のところで問題があるんだ。仮に、すべきことが見つかったとしよう。でもそれは、箱の中にいようが外にいようが実行できる。
ということは、箱の中でそれを実行したところで、箱の外には出られないわけだ。すると、こういいたくなる。
『なるほど。じゃあ、その行為を箱の外ですればいいわけだ』
その通り。しかし、すでに箱の外に出ているんだったら、今さら箱の外に出るために何かをする必.嬰などない。つまり、いずれにしても、行動することでは箱の外には出られない、もっと別のものが必要なんだ」
「それはいったい、何なんですか」

 


  箱の外へ出るために必要なものとは?
  もったいぶるようだけど、それはぜひ本書を読んでたしかめてほしい。
  なぜなら、その答えを本当の意味で知るには箱についての深い理解が必要だからだ。
  それでも、あえてその答えのヒントを示すとすれば次の一言に集約される。


相手を、自分と同様きちんと尊重されるべきニーズや希望や心配ごとを持った一人の人間として見はじめたその瞬間に、箱の外に出るんだ



 読み進めるとこの言葉の意味を感覚として掴むことができる瞬間がやってくる。

 最後に強調しておきたいのは、本書は人は常に箱の外にいるべきだと主張しているわけではないということだ。それほど人は完璧にできていない。
 それでも、箱と箱の外の世界を知ることは、あらゆる問題と向き合ううえで価値をもちつづけるだろう。

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